「手術は成功し、直後の再拡張性肺水腫も今のところは大丈夫です。」
心の底からほっとし、早くも涙がでそうになる。
だが、まだまだ安心はできない。ここからは大福自身の生命力が鍵となる。
まだ泣く時ではないといい聞かせ、車から飛び出すように大福のいるICU(集中治療室)へ向かった。
全身麻酔からの覚醒直後の大福は、見るからに意識は朦朧とし、まだ目に力はなく、痛々しい姿であった。
胸からは胸腔内ドレーンのチューブが出ている。
もはや歩けることすらままならない状態にも関わらず、こちらへなんとか近付こうとする大福を見て、自分は我慢が出来ず、涙した。人目もはばからず泣いた。
しかし、大福の痛々しい姿を目のあたりにしながらも、その後の不安よりも大福ならやってくれるという気持ちになった。
弱弱しくも、生きようとする、そんな力強さをこの子から感じた。
通常、この病院では夜勤体制ではないのだが、この日はさすがに一晩過ごしてくれていたようだ。
仕事上の指示かもしれない。
そうだとしても、とにかく今は感謝の気持ちでいっぱいだ。
翌日、面会に予約は必要ないため、パンを食べながら急いで大福の様子を見に行く。
嬉しいことに食事がのどを通る。
病院につき、力強く座る大福を見た。
こちらに気付いた大福は、か細いながらも精一杯鳴き、何をしてくれたんだと言わんばかりに呼ぶ。
その眼には早くも力強さが戻り、手を差し伸べるとゴロゴロと心地よく喉を鳴らす。
術後から24時間たっていないにも関わらず、この様子である。
さすがは野生で揉まれながら生きてきた猫だ。
すでに気持ち的には安心してしまっているが、まだまだ安心するには早いと言い聞かせ、病院を後にした。
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