5.知る事でさらに遠のく決断

数週間が立ち、手術について、外科治療を得意とする院長の話を聞くことが出来た。
大福の手術する場合は、院長が執刀することとなる。

大福が先天性横隔膜ヘルニアの手術を行うにあたって以下のようなリスクが存在するという。

 

  • 全身麻酔で行う手術に耐えられる身体であるか。
    子猫のため、全身麻酔から戻ってこない可能性が存在する。
  • 横隔膜の癒着が起こっていないか。
    横隔膜が無い状態で成長しているため、腹腔内(胸腔内)で臓器が傷つき、臓器同士で癒着している可能性があり、癒着状態によっては手術困難となる。
  • 縫い付けるための横隔膜が全く存在しない場合がある。
    通常、破れた部分をそのまま縫い付けるが、横隔膜が全く存在しないとなると、人口の膜を使用するため、通常よりリスクが高い。
  • 再拡張性肺水腫の危険性が大きい。
    肺が圧迫された状態でバランスをとっていたため、横隔膜ヘルニアの手術が終わった後、肺が急激に拡張することによって肺に水が貯まる状態となり、これによって命を落とす危険がある。

特に、先天性横隔膜ヘルニアの場合、肺が圧迫された状態で長期間バランスをとっているため、再拡張性肺水腫が起こり亡くなる可能性がもっとも高い。
手術に成功してもまったく安心できず、術後から数日間、大きな山場となる。

 


手術の手順は大まかに以下のようになる。

  1. 全身麻酔の後、身体を持ち上げ揺すり、臓器を腹部へ寄せる。
  2. 開腹し、胸部の臓器を手探りですべて腹部へおさめる。
    この時、少なからず他の臓器同士で癒着している部分があるはずなので、傷つけぬよう切り離しながら行う。場合によってはこの段階で手術困難となり、中止の選択肢もあり得る。
  3. 閉腹し、再拡張性肺水腫を防止するため、胸にチューブを通し、胸腔内の余分な気体や液体を除き圧を管理する(胸腔内ドレーンという)。
  4. その後、集中治療室で胸腔内を監視しながら、順調にいけば一週間ほどで退院できる。

 

(記憶で書いているため、同じ症状のペットをもつ飼い主様は、実際の担当医の指示に基づくようお願いします。)

 


リスクだらけで、聞かされた直後は「ハイ」という乾いた返事しかできなかった。


先生いわく、手術に自信はあるが、リスクが少なからずある以上、すべて話さなければならないとのこと。


成功率は五分五分、もしくはそれ以下かもしれないという。

 

君のことで悩んでいるんですが。。。
君のことで悩んでいるんですが。。。

 

リスクをすべて話してくれるのはありがたい。

しかし、これだけリスクを並べられて手術に踏み込む人はいるのであろうか。

リスク以上の価値がそこにあるのだろうか。


手術に成功した猫は、もれなく走り回っているという。


大福が走り回っている姿を浮かべると。。。改めて答えが出せなかった。

 

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